巻上公一さんや大熊ワタルさんをはじめとしたミュージシャンの皆さんに出会ってから、2年が経ちました。
その頃私は、公私共に大熊さんのパートナーとなり、大熊さんのマネジャーとして動くようになりました。
大熊さんのたくさんのご友人やお知り合いの皆さんとのご縁も頂き、チンドン屋さんの親方、高田洋介さんにもかなり早い時期に出会いました。
ちょうど桜の咲く時期に、チンドン屋さんのお祭り、「チンドンコンクール」が毎年富山で開催され、高田さんは東京チンドン倶楽部という屋号でご出演、大熊さんもその一員として参加していました。

左の赤い着物が私です。
1997年の春も、大熊さんは高田さんのチームで出演することになりました。
「観に行きたい!」と思っていたところ、別のチームでメンバーが足りないため、参加してみないかとお誘いを頂きました。楽器も何もできなくても、ただ一緒に出演すればよいとのこと。
ふと、95年のクレズマー音楽劇「DOINA」の打ち上げでのひとコマが思い出されました。
大熊さんが、
「何か楽器はできるの?」
と尋ねるので、私は、
「こどもの頃からお箏を習っていました」
と答えました。すると、
「僕はチンドンの仕事もしているのだけど、チンドン屋さんに興味ある?」
と。若手を探していて、楽器ができる人は特に向いているのでやってみないかと勧められたのです。ですが当時の私はまったく興味がなく、愛想笑いしながらその旨伝えた記憶があります(笑)。
でも、今回連れて行ってもらえるならラッキー!、と思い、私は小鶴家さんという親方のもとのチームの一員として、チンドンコンクールに出演しました。
チームは3人1組。ベリーダンサーのチュニジア人女性と、チンドン太鼓の永田久さん(現在はチンドン芸能社代表)、そして芸のできない私という編成。
私はステレオタイプのアラブ風の衣装を着せられ、テレコと呼ばれるカセットテーププレーヤーを担いで曲を流しながら、クネクネ踊るというお役目でした(笑)。
初めての体験はなかなかおもしろく、チンドン屋さんに入門しないと入れない世界をちゃっかり楽しませてもらったものの、これからやってみたいとまでは思いませんでした。
チンドンコンクールでは、富山の中心街を何十組ものチンドン屋さんがパレードします。出演者が多いため、自分のチームの出発の順番が来るまで待ち時間が長く、永田さんもチンドン太鼓を地面に下ろしてしばらく休んでいました。
そのチンドン太鼓をまじまじと見つめながら、
「こんな太鼓を叩けるのはすごいですね!私は一生かかっても無理です!」
と、午後の陽射しが照りつけ、アラブ風メイクが崩れゆくなか話したことを、いまでもよく覚えています。私には、今後も無縁の世界だろうと思いながら、初めてのチンドン体験を終えました。
大熊さんはこの当時、ソウルフラワー・モノノケサミットの一員として、阪神淡路大震災の被災地へと、たびたび慰問演奏に行っていました。
モノノケサミットはとても好きで、大熊さんが出演したライブも度々観て楽しみ、曲もすっかり覚えるほど、よく聴いてもいました。素晴らしいスピリットと、突き抜けるお祭り感、本当にリスペクトが募るバンドでした。

この年の夏、モノノケサミットは初めての海外ツアーの予定があり、行き先は返還直後の香港、ベトナム、フィリピン。私はまた「観に行きたい!」と思っていました。
翌月の下旬にツアーを控えた6月、モノノケサミットのチンドン太鼓奏者であるうつみようこさんが、都合が合わずツアーに行けないため、チンドン太鼓の人がいなくてバンドが困っていると、大熊さんから聞かされます。
チンドンコンクールとは違って、さすがに今回は、チンドン太鼓が叩けなければ連れて行ってはくれません。それどころかプロのメジャーなバンドです。素人がおいそれと入れるわけなどありません。
でも、海外に行きたい気持ちだけはどんどん膨らむなか、ある日私は、中川敬さんに、
「海外いいなあ!私も行きたい!!」
と話しました。すると、
「みわちゃん、チンドン太鼓、やってみたらええんちゃう?」
と、予想だにしなかった驚きの答えが返ってきたのです。
……やってみたら……ええんちゃう……
「?????!!!!!」
お箏こそ師範名取でしたが、打楽器経験はゼロの素人。そんな私に、中川さんはとてつもなく大きなチャンスをくれたのです。
これが、たった2ヶ月前は一生無縁だと思ったチンドン太鼓を叩くことになったときでした。
それもプロのバンドで。しかもデビューは香港。与えられた練習期間は、たった1ヶ月半。
単に海外に行きたいという気持ちだけでチンドン太鼓を始めた私は、果たして無事にステージに立てるのでしょうか。
皆さんの人生に現れた扉は、どんな扉でしたか。
私が1997年6月に開けた扉は、とてつもなく大きな扉でした。
物語は次に続きます。このつづきはすぐ書きます。
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