12.ビターなVENUS

「たられば」の仮定の話にはまったく意味がありませんが、もし私が、第一志望の共学高に進学していたら、引き続き勉強を楽しんでいたはずです。

私の頭脳次第ですが、少なくともいまよりはよほど知識と知恵を得て、別の人生を歩んでいたことでしょう。

でも実際には、高校入学後の私は、ぱったりと勉強をしなくなりました(苦笑)。

まさに良妻賢母を育てる校風のもと、女子しかいない校内には、何の刺激もありません(笑)。

品位があり聡明な生徒たち揃いのおかげで、学校生活では人間関係を始めとした面倒なことがなかったのは、とても良い点でした。

みんな実年齢よりも大人だったのかもしれません。とても心地よかったものです。

ちなみに、宝塚の大スターになった水夏希さんは同じ学年で、ミュージカル部にいらして、まだ原石だった彼女の舞台を高校で観た記憶があります。

電車通学のおかげで、親の過保護下から解放される時間が増え、物理的な行動範囲の広がりは、私の視野をうんと広げてくれました。

それまで生き甲斐のようだった勉強を放棄し、自分にとって絶対的な存在だった祖父の在り方がゆらいだ高校時代、自分とはなにか、世界とはいかなるものかを探る日々になります。


高校一年生の年にはJ-WAVEが開局し、洋楽好きの私は、開局前の試験放送期間から熱心に聴いたものです。

開局当時のポスターだそうです

開局からしばらくは、洋楽だけが流れ、日本のアーティストの曲はめったにかからなかったのが私好みでした。(特に試験放送中が最高だった!)

クリス・ペプラーさんナビゲートの「TOKIO HOT 100」を毎週聴いて、ヒットチャートを把握しながら、知らないアーティストに出会えるのも楽しんでいました。

そんななか、当時のヒットチャートを賑わせていたバナナラマが来日、友人と武道館に観に行きました。小学生の頃にコンサートを経験してから、その後何度か日本のバンドやアイドルのコンサートには行きましたが、海外アーティストは初めてです。

これ、大ヒットしましたね!

当時、前売券はぴあなどのチケットカウンターに直接行くか、電話で予約して購入するものでした。発売開始日はカウンター前に列ができ、人気公演は徹夜組も。電話の場合は何度もリダイヤルし続け、努力と忍耐の果てにご褒美さながら前売券を獲得したものです。

バナナラマの良席は早々に完売し、取れたのはステージから遠い席。それでも生で聴けるなら最高だろうと、女子高生たちはかなりの期待を胸に幕が開きました。

ですが、やはり武道館です。

大写しになるプロジェクターはまだなく、本人たちは豆粒程度。

ステージとのタイムラグがあり、音が回りまくるなか、他方からの跳ね返りも聞こえます(笑)。

さらには、生演奏ではなく、すべてカラオケ。しかも、いくら動きまわっても彼女たちの歌声はブレることなく、おそらく口パク。

彼女たちは彼女たちなりにがんばってくれていたのかもしれません。が、お商売のいいカモになってしまった女子高生は、生のコンサートの魅力を味わえずにがっかりしながら帰路に着いたのを今でも覚えています。

でもその思い出は、自分がステージに立つようになってからの良き教訓となっています。この日まで楽しみにしてくれて、わざわざお金を払って観に来てくれた人たちに存分に楽しんでもらうのがお役目だと。

一見残念な経験にも、大いに意味があるものです。経験には無駄なものなどひとつもないことは、半世紀生きてきて特に実感していることです。

自力で少しずつ籠の外に出るようになった高校時代には、こうしたビターな経験(大したことありませんが)も味わいながら、一気に見識を広めていきました。若い頃の好奇心と学習能力はすごいものでした。

そしてこの時期、私は音楽のほかにもうひとつ、人生を左右するものに出会います。

物語は次に続きます。

皆様の毎日も、素敵な物語を綴るような日々でありますように。

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